今回は『ジョジョの奇妙な冒険』第4部に登場する岸辺露伴が主役のスピンオフ作品『岸辺露伴は動かない』アニメ版の紹介です。
各話STORY・ネタバレ
六壁坂(むつかべざか)
岸辺露伴が編集者の貝森稔(かいがもりみのる)とカフェで打ち合わせをしている。打ち合わせが始まるとすぐ、岸辺露伴はお金も執筆する作業場もなくて困っており、今は広瀬康一の家に居候していると暴露する。実は露伴は破産して家を失ったらしい。
岸辺露伴は六壁坂村(むつかべむら)という村の妖怪伝説を取材するために山を購入したが、近くでリゾート開発が始まり妖怪に逃げられては堪らないと思い、一帯の山を6つ買い占めることでリゾート開発を阻止することにした。しかしその結果リゾート開発が頓挫し、地価が暴落して破産してしまっていた。
そもそも、岸辺露伴が破産してまで取材したかった六壁坂村の妖怪とはいったいどんな妖怪なのか。
六壁坂村には300年続く味噌づくりで成功した一族のひとり娘である大郷楠宝子( おおさとなおこ)という女性がいる。この女性と偶然出会った露伴は記憶をヘブンズドアーで読み、彼女に起きた奇妙な出来事を知る。
- 大郷楠宝子は許嫁である高窓修一(たかまどしゅういち)という相手がいるにもかかわらず、庭師のバイトである釜房郡平(かまふさぐんぺい)と浮気をしていた。
- ある日これ以上関係は続けられないと大郷楠宝子は別れ話を切り出すが郡平に拒絶され口論になる。口論の最中郡平を突き飛ばしてしまい、郡平は後頭部をゴルフクラブにぶつけて亡くなる。
- 郡平の傷から流れ出る血を止めようとするが、亡くなっているにも関わらず血は一向に止まらない。
- 大郷楠宝子はなんとか郡平の死を隠し、その後修一と結婚する。
- しかし、それ以降も郡平の傷口からの出血は止まらず、毎日300㏄の出血が続き、彼女は血を処分するのが日課になったことで遠出もしていない。
- そして、いつからか郡平には自分がいなくてはダメなんだという愛情を持つようになった。
露伴が大郷楠宝子のこの記憶を読んだ後、六壁坂村の山中で一人の少女に出会う。少女は露伴に対して最近この村を嗅ぎまわっていること・最近変質者が多いから気を付けないと、と挑発する発言をして走り去ろうとする。
それに怒った露伴は少女を引き留めようと追いかけるが、運の悪いことに少女は転んで岩に頭をぶつけて亡くなってしまう。その状況は、まさに大郷楠宝子の記憶で読んだ釜房郡平と同じであった。
露伴はヘブンズドアーで少女の記憶が消えるのを見て、このままでは自分も大郷楠宝子と同じように取りつかれてしまう感じ、「岸辺露伴なんて知らない。たとえ出会っても岸辺露伴を見ることさえない。」と書き込んだ。こうして、少女の死は避けられ、露伴も大郷楠宝子と同じ運命をたどることはなくなった。
そして露伴は、こう推測する。
妖怪は憑依された人間が被害者の出血を処理するために世話を焼くことで永遠に存在することができる性質を持ち、誰かの前で勝手に死ぬことがこの妖怪が人間に憑依することが幸福の絶頂。
人間の愛と心の弱さに付け込んで自分では何もせず、全ての世話を人間にさせ、なんの責任も負わず、ただ子孫を残すことだけを目的する妖怪だと。
富豪村(ふごうむら)
ある日、編集者の泉京香(いずみきょうか)から大富豪しか住んでいない村を購入しようと計画しているため、それをネタにしないかと話を持ち掛けられる。
富豪村は東京から80㎞の場所にあるが村に通じる道が一切存在せず、ヘリコプターだけで移動するほどの金持ちしか住んでいない村。また富豪村に住む住人全員には、誰もが20代の若い頃にこの村の家を購入したことがきっかけで大金持ちになっているという驚く共通点があった。
興味を持った露伴も同行することにしたが、富豪村の売主はマナーに五月蠅く、マナーを守らないと土地を買えないようだ。2人がマナーを確認しながら、家の門に辿り着くと一究(いっきゅう)という案内役の少年が出てきて中に入ることに。
そして、部屋に案内され一究は売主を呼びに行くと席を外す。待っている間もマナー違反はできないと話しながら出された紅茶を泉京香が飲もうとすると、一究が戻ってくる。しかし、彼は「誠に残ですが、今日はお帰り下さい」と言い放つ。
彼は、泉京香が既に3つのマナー違反を犯していることを指摘し売主は無礼なものに土地を売ることはないと突っぱねます。
そのマナー違反とは、以下3点だった。
マナーは正しいか正しくないかのどちらかであり寛容は許されず、泉京香はすでに3つもマナー違反をしたため土地を購入することはできない。しかし納得のできない泉京香が再トライしたいと主張すると、一究はその旨を主に伝えて返事を聞いてみると言い再び部屋を出ていく。
ところが次の瞬間、泉京香の電話に母親と彼氏の2人が交通事故で死んだという訃報が入り、泉京香は絶望する。その直後、一究が戻ってくると再トライを伝えたところ許可が出たと話し出す。異常な出来事だと察知した露伴はヘブンズドアーで一究から情報を得ようとする。
そこには、
- 一究はただの案内係で、土地の意思を伝える役目を負う者である
- 「この土地に入る時、敬意なきマナー違反者は自身の大切なものをひとつずつ失うこと」つまり、このルールは山が定めた掟であること
- ひとつ失うかひとつ得るか、それは山からのパワーであり、土地に敬意を払うものは成功を得るが、非なる者はひとつずつ失う
という内容がかかれていた。
そのため、3つのマナー違反を犯した泉京香は恋人と母親を失うという悲劇が起こったのだ。そして露伴に、次の文章が目に入る。「人間を本にして他人の心の中を読もうとするなど、それも相手への経緯に欠けるマナー違反」と。
露伴はマズいと気付きましたが、すでに遅く泉京香が心臓発作で倒れてしまう。山は露伴が一究の内面を読んだ行為を許さず、そのマナー違反の代償として泉京香が襲われたのだ。
一究は続けて露伴に1本のトウモロコシ丸ごとを差し出して、これをどう食べるか再トライを問います。これに対して露伴は両手でトウモロコシを持つと同時に、一究に畳の縁を踏んでいることを指摘する。
これは露伴がヘブンズドアーで畳の縁が見えなくなると書き込んでいたことで、一究からは縁が見えず何度もマナー違反を犯していた。一究がマナー違反を連発したことで泉京香や岸辺露伴のペナルティーは帳消しにされ、泉京香も意識を取り戻すことができた。
その後、「これはイカサマだ」と憤る一究は、再トライするか、それともこれで帰るかと尋ねます。これに対して露伴は、「いいや、マナーを犯したのは君のほうだからな。だが帰る。そして二度と来るつもりもない!」と言い放ち村を立ち去る。
無事に東京に戻ると泉京香の恋人と母親が死んだという知らせは誤報だったと変わっていた。
ザ・ラン
橋本陽馬(はしもとようま)は平凡な青年で、俳優を目指すモデルとして活動しながらジムで体を鍛えていた。芸能界では見た目がとても重視されるので、中身よりもまず見た目を磨く必要があると指導され、橋本陽馬は体作りのためにジムや家で筋トレに励む。
しかし徐々に筋トレにのめり込んだのか、橋本陽馬は同棲している早村ミカ(はやむら ミカ)の部屋で縄跳びをしたり食べ物はタンパク質しか食べないなど制限した状態で筋トレをしている。
ところが、いつしか橋本陽馬の様子は蒸気を逸するようになる。
彼女の部屋に断りもなく勝手にボルダリングのボルダーを取り付けたり、彼女のキャッシュカードからお金を無断でおろすなどエスカレートしていく。ついに部屋から追い出されるがマンションの外壁にもボルダーを吊り付けており、これを使ってマンションの外に出ていくという考えられない行動をする。
そんな橋本陽馬は偶然同じジムで岸辺露伴と出会っており、ランニングマシンで先に時速25kmに到達した方がストップボタンを押すという勝負をするようになっていた。その日も、勝負をしている中で露伴は橋本陽馬の筋肉の付き方が異様であることに気が付く。耳の後ろや脹脛・肩甲骨の筋肉が翼のような形になっているのだ。
そして、以前露伴に負けていた橋本陽馬だったが、序盤から圧倒的に橋本陽馬がリードしバック走行しつつスピードは落とさないという行動に出た。そして、露伴が勝負に下りないよう、鉄アレイを後方の窓ガラスに投げつけ大きな穴がを空け、スピードが出ているランニングマシンの上で走るのをやめると弾き飛ばされて落ちてしまう状況を作り出した。
そして、ランニングマシンで先に時速25kmに到達した時、橋本陽馬にストップボタンのリモコンを先に奪われてしまう。しかし、橋本陽馬がストップを押したのは露伴のマシンで、橋本陽馬は油断して後方へ弾き飛ばされて窓から落ちてしまった。露伴はリモコンが奪わる瞬間、ヘブンズドアーで橋本陽馬に自分のマシンを停止させるよう書き込んでいたのだった。
露伴は橋本陽馬が筋肉の神(ヘルメス神)に取り付かれた筋肉の神の化身であると確信し、不用意に神の化身に勝負を挑んだことを反省した。そのまま神の逆鱗に触れていないことを祈り非常口から立ち去った。
懺悔室
岸辺露伴は広瀬康一からイタリアに行く話を聞き、取材でイタリアに行った時のことを思い出す。露伴はリアリティ―を追求するため、勝手に入ってはいけない懺悔室に入り雰囲気に浸っていた。ところが、露伴が入った部屋は神父の部屋であり、偶然信者が懺悔室に入ってしまう。露伴は困惑するが、これも作品にに必要だと思いそのまま神父になりすまして話を聞くことにする。
告白に現れたのは一人の男性で、彼は自分の過去について告白始める。
- 若かった頃、賃金の安い肉体労働に従事していた。ある日、仕事中の男性の前に一人の浮浪者が現れて食べ物を恵んで欲しいと懇願される。
- 男性は自分が大変な肉体労働でやっとお金を得ているのに対し、浮浪者がなにもせずに物乞いをする事に腹を立て、自分の作業を代わりにしてくれたら食べ物をあげると意地悪な条件を提示する。
- 浮浪者は真面目に実行しようとするが、5日間も何も食べておらずその結果、浮浪者は力尽きて死んでしまう。
- そして、死ぬと怨霊の姿として男性の足元に現れ、「この報いは償わせてやる!お前が幸せの絶頂にいる時、お前を迎えに戻ってくる!」と言って消えてしまった。
男性はこの事件後、異様に運が良くなり土地の売買やポップコーンの販売などで大成功して暮らしている。そして、妻との間に娘が生まれ娘と一緒に遊んでいる時に幸せの絶頂を感じていた。
そんな「幸せの絶頂」を感じた瞬間かつての浮浪者が、怨霊として娘に憑りつき現れた。このまま殺してもいいが自分の復讐が公平な行いであることを神にジャッジしてもらうため、男性に条件付きで生き残るチャンスを与える。
その条件は、「これから、この場所で、ポップコーンを街灯のランプよりも高く投げ上げて3回連続口でキャッチすること」。タイミングは怨霊の合図に合わせて投げ、投げる高さがランプより低い場合は失敗とみなされる。これができれば二度と姿を現さず、娘も無事に返すと怨霊は約束した。
そして、男性は怨霊の言われるがままポップコーンを投げた。
- 1回目:太陽の光に目がくらむも成功
- 2回目:ポップコーンを餌と思ったハトが集まってしまい、袋を破きポップコーンを地面にばら撒くことで成功
- 3回目:2回目で寄ってきてしまったハトに盗られないようポップコーンに火を点けて投げたが、太陽の光と重なりポップコーンが見えなくなり失敗
次の瞬間、怨霊は「神のジャッジは逆恨みではないと下った!」と言い、男性の首を刎ねて消えていった。
露伴は、首を刎ねられたのなら今ここで告白しているのは誰なのか疑問に持つ。しかし、男性は今日ここに来て告白することは今から話すことだと続けて言う。
男性は整形手術をさせた召使いを身代わりにしており、怨霊は間違ってその身代わりの首を刎ねたという。その時懺悔室の外から奇妙な声が聞こえ露伴が懺悔室のカーテンからそっと外を見ると、そこには刎ねられた自分の首を片手に抱えて地面を這いずる召使いの怨霊と、召使いの首を刎ねた2人の怨霊がいた。
騙されて死んだ召使いの怨霊は言いました。
「この恨みは旦那様の娘が幸せの絶頂の時、必ず旦那様を迎えに来ます」と。
そして、召使いを殺した怨霊は、「迎えるのはダメだ。今度は騙されないようずっと見張っているぞ!」と叫んだ。
感想
ジョジョの話をすべて見ていなくとも、ある程度「スタンド」などを知っていれば見れるお話になってました。話もスタンドで敵を倒すというバトル風ではなく、オカルト系の話なので奇妙な現象にスタンドや知恵を使って立ち回る短編集のようでした。
ホラー要素はありつつも、岸部露伴が主人公だからか全く怖がらずに一気見できました。実写化もされているのでそちらも見てみようと思います。